麻雀業界日報(保管)

麻雀業界日報(2003~2005)の保管

松本剛(原案協力・板垣久生)『甘い水』上下巻(ISBN:4063301974,ISBN:4063301982)

「親待ち千点棒」などで麻雀業界でも有名な松本剛が,別冊ヤングマガジン2002年27号〜42号にかけて連載した意欲作.短編を主に手がける作者初の2巻物となった.栞が美しい.
同作は北海道の田舎町が舞台.作中に麻雀店が2店舗描かれ,背景として役割を果たしている.以下未読の方は避けていただければ幸いである.

  • 舞台は道東.「帯広までコンサートを見に行く」という描写があるのでそれより田舎.帯広市の人口は17万人,世帯数7万強(平成12年現在).フリー麻雀店が成立するギリギリのラインか,少し下である.
  • 中山美穂WANDSのヒット曲「世界中の誰よりもきっと」(1992)を歌っている.釧路沖地震(1993年1月15日)の前後だろうか.主人公は『菜々子さん的な日常』の瓦敬助(三部けい)とほぼ同年代と憶測する.
  • 上巻に出てくる麻雀店は備品が比較的新しい.客層も暇を持て余した個人商店主かフリーターのように思われる.自動卓ではなく,点リーダー(持ち点表示機能)もないようだ.フリーが成立しないところでは,セット(仲間うち)で打っているところに余所者が入り込んで打つような形態が出現する.
  • 札幌から来たヒロインの父は,そこに入り込んでいくらか大きな金額を溶かす.「リーチ・一発・三暗刻・裏ドラ2」.伍索でリーチをかけて二索で待つ,いわゆる「ひっかけ」の類.
  • 下巻に登場するのは古めかしい麻雀店,小湊町の「エリス(Elis)」.運河のすぐ脇,アパートの2階に位置する.椅子のデザイン・観葉植物などのインテリア・建物に不釣合いな自動ドアがいわゆる「30年前の麻雀サロン」的であり,紹介者がいないと入ることが出来ない類のお店のようだ.
  • 客もその筋の者にしか見えない.ヒロインの父がそこにいるということは,町の社会(というよりは暗部)に溶けこんだことを示すのか.「雑魚に売るのはもうやめだ」のセリフ.

奥付には作者の現在までの作品リストがあった.麻雀雑誌に掲載された分について以下に挙げる(年,作品名,掲載紙名).全ての作品については駿馬氏のサイト「STUDIO MAILAND」に詳しい.また,「漫画に関するWebページ『OHP』」(管理人:しばた氏)によれば,再録されたものもあるという.

あやふやな記憶を頼りにすれば,どれもあまり麻雀とは関係がなく,作者が得意とする思春期の情景を描いたもの.まだ単行本にも収録されていないので,ぜひ刊行してほしいものだ.
【参考】