麻雀業界日報(保管)

麻雀業界日報(2003~2005)の保管

地引かずや+北野海人『雀ゴロ血風録 烈』3巻 (ISBN:4408167487)

実業之日本社週刊漫画サンデー」(通称マンサン)に連載中.2002年9月24日号〜同年12月3日号掲載分を収録.このコンビは以前に『風のダート』という競馬マンガを描いていたらしい.
主人公がある種の超越的なものに対する受信感度を高めていく正統派麻雀マンガ.この作品の場合は「牌」と「人生」が超越的なものにあたる.これらを感じ取って闘い,また生きることによって道が開けていく.
また「牌」が「麻雀の神様」ではなく,「人生」が「神の意思」ではないので,ただの受信者・教祖ではなく,能動的に道を切り開いていく人間を描くことが可能になる.これは恐らく掲載誌の性格によるものだろう.
代打ちの仕組み,裏賭場の様子などの細部の描写にも優れ,効果的な解説も入り,「手堅い」という評価以上の作品.以下ネタバレを恐れる方は避けていただければ幸いである.

  • 3巻の主な登場人物は以下の通り.
    • 烈 : 主人公.少し垂らした前髪,変なガラのシャツの典型的な主人公スタイル.牌に愛されており,また牌が最大の相棒.鬼ヅモ(残り少ない牌や非常に有効な牌をツモったりすること)の持ち主.
    • コブラ : 最大の敵.スキンヘッドに三筋の向こう傷.対戦相手3人の捨て牌や仕草から心理状況を即座に読み取り,そのネガティブな部分を利用して自分のペースを作り,相手を壊す.
    • 金次 : 東大卒業後,アフガニスタンで傭兵として活躍したあと雀ゴロの世界へ.2巻では肝の太さと狡さで烈を悩ませたが,3巻でコンビを組む.最後はイカサマを見破られて利き手を刺される.正統派麻雀マンガでイカサマがNGである理由は「ずるいから」ではなく,「欲にこだわって受信感度が鈍くなるから」だと自分は考えている.
    • 雅枝 : コブラとコンビを組んで烈と戦うが,その娘(コブラとの間の子供だと思われる)は烈になついている.スピードに優れ「一哭(な)きの雅枝」の異名を取る.
    • 銀狼 : 裏の賭場にいる中国人たちのリーダー格.中華服に中華帽というあからさまなスタイル.「河(ホー)が呼んでる」などと小学校唱歌のようなことを呟くが,最後にいいセリフを吐く.感度のいいもの同士が響きあうシーンの白眉.
    • 辰さん : 烈の師匠であり,この作品の進行役.雀ゴロとしてコブラに破れ今はホームレス.有効なアドバイスを送って烈の成長を助ける.
    • 真樹 : 烈の恋人.料亭の娘だが,チェ・ゲバラTシャツを着ていて,ゲバラについてやけに詳しい.
  • 闘牌監修は五十嵐毅プロ(協会).下の牌姿から四筒ではなく七筒を落とすのには理由があるのだろうか.

  • 最後に作品世界にはまっているとなんとも思わないが,少し離れてみると面白くなる画像を一つだけご紹介したい.