本そういち『麻雀無限会社39ZANK』3巻 (ISBN:481245817X)
6月28日刊行.雑誌「近代麻雀オリジナル」に連載中.作者は協会のBリーグに所属しており,別の作品では協会の試験問題を出すなどして麻雀マンガの新しい面を切り拓いている.この作品では安藤満プロ(連盟)の闘牌シーンを得て,密度の濃い空間を描くことに成功している.本来自分の手に負えるものではないが,「行けるとこまで行ったるぜ」.
- 麻雀を打つことで収益を得る会社「ザンク」を設立した高井とガンジーの物語.高井が表パート,ガンジーが裏パート.『プロ』『北の狼』『てっぺん』…古くからある光と闇のパターン.
- 表紙の高井は初代ルパンのコスプレ.
- 高井は「クラリス女子大学」で麻雀レッスン.ステレオタイプな「お嬢様」たち.
- マージャンサークル「ピヨコネット」.女子だけのマージャンサークルの嚆矢「たまご組」からとった名前か.
- 1人4,000円のレッスン料を高いと思わせないための巧みな作戦.クラタマは頭が切れる.
- 高井は指導卓の半荘を勝ち切った上に的確な解説.広がるポの字,一躍アイドル.
- 次なる目標は「プロ」.「雀プロといえば食えない職業の代表!」クラタマの率直な意見だが高井には勝算がある模様.
- 一方高田馬場で空を見上げるガンジー.神田川のそばで「何か手に入れたい」と願う.
- ガンジーが打つ場所は新宿→渋谷.都庁・246号線・明治通り・渋谷川の暗渠・ガード下,ところどころ差し挟まれる都会の情景.現在オリジナルに連載中の『鉄砲』と同様,サクセスストーリの舞台としての「大東京」がある.
- 賭場の成り立ちをガンジーに教える自営者.正座とあぐらとで分かれる彼我.分かりやすく自然な形で話が進行する.
- 流れをつかみ,手管を用いて1人を追い落とし,這い上がってこないようにする麻雀.そうすればトータルプラスが容易くなる.
- 敗れてうずくまる白スーツを越えて,白く冷たく輝く道.銀杏散る頃の早めの雪.
- おまけマンガは「実録!こうして私はプロになった」と「本そういち九州大分最強伝説」.今年は沖縄と北海道の最強戦予選に参加するらしい.
表紙こそ『鉄砲』(嶺岸信明+来賀友志)に譲るが,現在の「近代麻雀オリジナル」を性格づける最も重要な連載と思われる.名作の列に加わることはほぼ間違いないが,現実とシンクロナイズさせようとする時,どのようにきしむかが注目される.
【参考】
- 本そういち先生公式サイト「王様ランド」: http://home.att.ne.jp/star/motozo/
- 「雑想庵」2002年4月12日,『プロ』の感想: http://www.ann.hi-ho.ne.jp/a-hisa/ken2002-04.htm#20020412
- TAKK氏「PRIVATE HOMEPAGE」内「聖なる双子の世界」(双子ものとして『北の狼』が採りあげられている): http://www1.neweb.ne.jp/wb/prideworks/comic/twins/t_main.htm
- シブヤ経済新聞2001年11月30日付の記事「注目を集める新・商業空間 渋谷・高架下ビジネス事情」(ガンジーが打っていたのもおおよそこのあたり): http://www.shibukei.com/special/2001/11/30/