麻雀業界日報(保管)

麻雀業界日報(2003~2005)の保管

せきやてつじ『おうどうもん』 2巻(ISBN:4812458544)

7月7日発売.「近代麻雀ゴールド」2003年1月号〜6月号掲載分を収録.ハッタリ1点突破のせきやてつじが麻雀マンガという水を得て,野放図に跳ねまわる巻となった.こんな大魚を押さえ込める筆力を自分は持ち合わせていないが,力の及ぶ限り.

  • 帯のアオリは佐藤秀峰.「誰もやっていない新しさ,そこに挑戦する"熱"に,僕は共感します.」とのこと.言葉どおり,熱と過剰さに溢れた作品.
  • 基礎用語解説.
◆おうどうもん
横着者のこと.単なる怠け者ではなく,大物ゆえに小事にかかずりあわない人間を指すような気がする.自分と同世代の福岡人には,鮎川誠が出ていた「はかたんもんラーメン」のCMに出てくる言葉として認知されている.
◆ヤッサヤレヤレ
本作が業界内に生み出した流行語.本歌は「小倉祇園太鼓」で,そもそもは下関の社の歌だったらしい.同種の物として,『はっぽうやぶれ』(かわぐちかいじ)の「オッショイ」(博多祇園山笠の掛け声)が想起される.小倉(北九州)と博多(福岡)は決して友好的な間柄ではない筈なので,オマージュであると同時に対抗意識があるのではないか,と穿ってみたくなる.
◆LET IT ROLL
主人公・健太のTシャツの文字.「転がしとけ」という意味だろうか.同名の曲が沢山あるらしい.
◆割れている
敵役・毒蛇(ドゥーシー)の外見を一言で表したもの.唇も口もアゴも,そして舌まで.(参考1・グロにつき注意)
◆楼閣
2人が勝負している場所.日本にあるのは間違いないが,池のほとりに立っており,中国にしか見えない.しかも歌舞伎町からほど近いらしい.謎の建物だが,細かいことは気にならない.
◆風神
 健太の親父のあだ名.彼が決戦の場に登場するときは本当に風が吹いている.(参考2).
  • 作者が小倉の出身とのことで,北九州弁が横溢する.「しゃあしい」「〜しちょる」.親父の「これが最後の麻雀」は,普通だったら「〜麻雀」だが,飯塚の知り合いに聞いたところ,「強く言うときはそうとも言う」との答えだった.
  • 健太の子供時代のシーンで,ダイエーホークスの帽子をかぶっている.ホークスが福岡に来て15年,今年も北九州市民球場での試合は5試合組まれている.
  • 麻雀マンガの肝である(と思う),「手」の描写が生きている.健太の若い手,毒蛇の大きな手,親父の節くれだった手.稲光伸二がもしこれくらい手を描けていたら…
  • 健太は口を引き絞り,毒蛇は口をとがらせてうそぶく.「ロン」と発声するためにはうそぶかなければならない.
  • ほぼ日刊イトイ新聞」の「担当編集者は知っている」にこの作品の竹書房の担当編集者の話が掲載されている.文中の「2号で休刊」した雑誌「近代麻雀増刊WINING」では青山広美の原作で「ラスベガス・キング」を描いていた(後に近代麻雀本誌にも2回掲載).
  • 最後のロシアンルーレット対決に敗れた親父が斃れるところで終了.ヒキが非常に強い.

【参考】