麻雀業界日報(保管)

麻雀業界日報(2003~2005)の保管

片山まさゆき『牌賊!オカルティ』 6巻 (ISBN:4812458595)

8月27日発売.雑誌「近代麻雀」2002年12月1日号〜2003年8月1日号掲載分を収録(月1連載).スネークアイズカップ決勝の息もつかせぬ駆け引きと,クライマックスに向けての序章を描く.自分は今酔っていて,それはつまりシラフではこの傑作をどうこう言うことができない,という意味である.未読の方は避けていただければ幸い.

  • 自分の正統派麻雀マンガの定義「超越的なものに対する受信感度を高めていくマンガ」に照らし合わせれば,この作品は異端で,片山まさゆきに追随者がいないのも同じ理由.
  • 来賀作品の登場人物が一様に,天からの声や甘露を懸命に受信しているのに対し(『あぶれもん』は次のミコトモチを決める戦いで,甲斐が殺されるのは天罰),この巻の主人公たちはお互いの戦術の有効性を競い合う牌の縦横家であり,自分の信念を第一とするリアリストでもある.
  • オカルト・デジタルに関する喰い足りなさについては色々言われているが,そもそも二元論にこだわっていないように思われる.最初から夏月は第三勢力にするつもりだっただろうし,その方が魅力的だ.
  • ただ「デジ×オカ」がキャラクターの性格にまで持ち込まれるのは,当然とはいえ厳しい.群鴎×利積の組み合わせだと「メロンソーダでゴゴゴゴゴ」になるものが,同じデジタルである利積×無頼堂だと「本物の雷が鳴って嵐の予感」になって精彩を欠く(片山まさゆきの「ヌキ」が好きな自分にとっては).ルフラン・岬の影が薄くなっていくのも残念.
  • とはいえ闘牌シーンの前にすべての言葉が色を失う.夏月の失敗は本人しか分からないし,利積の仮テンアガリをただのドラ3と侮る人もいないし,群鴎の仕掛けにあきれる人もいない.1話の中にこれだけの説得力あるアガリを盛り込む離れ業.
  • 夏月が店長を勤めるお店で本走に入ると,後ろで客が観戦し始める.「月刊プロ麻雀」2003年4月号でも「またお店をはじめた理由」について書いていたが,よほどフリー麻雀店が好きでないと,こういう理想のシーンは描けない.
  • 巻末に今までのオカルト一覧.
  • 『運王』(本紙8月28日付記事参照)の新月は,「パチプロ」と同じような意味で「麻雀プロ」と呼ぶことができるし,現在の一部の麻雀プロの生活と重なる面は多いと思われる.片山まさゆきが『運王』と『オカルティ』,両方の生き方を描く唯一の才能であること,そして片山にとっては『オカルティ』こそがプロであることは,業界人として触れておきたい.