麻雀業界日報(保管)

麻雀業界日報(2003~2005)の保管

『色川武大VS阿佐田哲也』(KAWADE夢ムック・文藝別冊)(ISBN:4309976646)

10月24日発売.色川武大(阿佐田哲也・井上志摩夫)の単行本未収録作品を中心に,エッセー・紀行文・対談を収める.新しい記事として伊集院静×村松友視,立川談志×吉川潮の対談,白川道,越智道雄,正津勉,植島啓司のエッセイなど.巻末に全著作レビュー・年譜も加わったA5版268ページ,1200円(税込).
とにかく重厚な内容で,どこから読んでも外れがない.読んでいるうちに『百』を読み返し,『Aクラス麻雀』を本の小山から掘り返し,『狂人日記』を図書館で予約する羽目になった.埒が開かないので,とりあえず思いつくまま紹介していきたい.

  • アルバムの冒頭に「弟」の写真.
  • 柳史一郎の追悼文の再録.現在は雀鬼桜井章一を初めて取り上げた人として名が知れているが,色川武大との交情は25年にわたるものらしい.色川が阿佐田哲也として世に出るまでの仔細を綴っている.自分が命名した『Aクラス麻雀』について柳は納得いっていない様子だが,この書名は知れ渡り,しかも模倣やもじりは聞かないのだから,見事な名付け親だろう.
  • マガジン『哲也』の原案・さいふうめいの評論.この本の中で最も色川と阿佐田とを峻別している.「阿佐田哲也」は筆名でもあり,その名義で書かれた小説の主人公でもある,という二重性を認識しながら,全くのフィクションを作り上げていった氏にふさわしい.文章がやや長すぎるのは,好き勝手やっている事に対するエクスキューズなのだろうか.
  • 警視正大門寺さくら子』(画・高橋のぼる)の原作者・大西祥平による,阿佐田哲也原作マンガについてのコラム.現在最も熱い作品である『凌ぎの哲』に触れているのはさすがだが,北野英明からすぐかわぐちかいじへ行ってしまい,80年代の麻雀マンガの豊穣,猥雑な熱気を拾っていない憾みもある.「阿佐田原作」という制約に縛られず,もう少し全体について書いてほしかった.
  • 福地誠による研究「阿佐田哲也はどんな麻雀を打っていたのだろう」.阿佐田の麻雀を精緻に分析し,分かりやすい形で提示している.と同時に筆者は,桜井章一阿佐田哲也の系譜に位置づけようという意図を抱いているように思われる.新古今に対する明治短歌革新運動のようなものか.
  • 東京マージャンMagazine」の塔四郎氏が発掘した井上志摩夫名義の小説「天和をつくれ」も収録されている.

分かってる人はパラパラと,分かってない人は秋の夜長をゆっくりと費やして読むのがよさそうだ.とりあえず買っておくべき1冊である.
【参考】



【メモ】板移転: http://gamble2.2ch.net/mj/