麻雀業界日報(保管)

麻雀業界日報(2003~2005)の保管

天津建衛600年特集の不思議な麻雀記事

中国の4つしかない直轄市の1つにして1000万都市,天津.その建設600年記念特集に,麻雀に関する興味深い記事がいくつかあったのでご紹介したい.訳は全てExcite翻訳を利用した.
天津飯」「天津甘栗」などで有名な中国の都市,天津(実際の天津にはどちらも存在しないらしいけれども).明代の1404年に「天津衛」という軍営が設置されてから今年で600年の節目ということで,中国のポータルサイト「新浪」のニュースセンターでは,「天津建衛600年記念」という大掛かりな特集が組まれている.その中には麻雀の記事が3つあったので,逐次紹介していきたい.
■何故天津で麻雀が流行ったか?
記事の一つ,「マージャンの改良は4風を吹く」(日本語訳)によれば,天津に寧波から麻雀が伝わったのは1895年前後.その当時は賭博の種類がいくつも存在したので,特に流行したという訳ではなかったらしい.
麻雀が本格的に盛んになるのは日露戦争(1904〜1905)後のこと.慈禧太后(西太后)が麻雀を愛したので,その歓心を買うため,官僚達が競って麻雀を覚えるようになったという.首都北京の外港(東京と横浜みたいな関係か?)である天津でも,麻雀の音があちこちで聞こえるようになった.
当時の清王朝汚職が横行しており,「三年清知府,十万雪花銀」(清廉潔白な知事でも任地に3年いれば,とてつもない額の銀が貯められる)という状態.官僚はいわゆる「接待麻雀」にわざと負けることで賄賂を贈り,上官に取り入った.「麻雀=賭博」のイメージはこの辺りに起因するらしい.
■アルファベットの麻雀牌
同じく「マージャンの改良は4風を吹く」(日本語訳)から.100年前の天津の麻雀事情は上記の通りだが,その悪習を改めるために活動している人がいたという記事.
当時の大新聞「大公報」には「アルファベットの麻雀牌」という提案が紹介されているという.これは「A〜Z」の26文字,それに英数字の「1〜9」の9文字,計35文字×4枚=140枚で構成されるもので,これは当時の「マンズ・ピンズ・ソーズ」の27種類+「白・發」などの花牌8種類(このあたりやや不明)の麻雀牌と符合する.
考案者は,トランプの代わりにもなり,英語の勉強にもなるということで一挙両得を狙ったらしいが,当時の評価は「奇想天外」という程度.当然普及もしなかったという.当時から麻雀=賭博のイメージが強く,それを覆すのは難しかったことが推測されるエピソードである.
■不思議な三元牌の起源説
次に「マージャンは法と言う 寧波の方言は言った通りにする」(日本語訳)からの抜粋.麻雀の発祥地である寧波の方言に色濃く残る,麻雀にちなんだ言い回しについての記事なのだが,とても不思議な三元牌の起こりについての説が掲載されている.引用すると(強調引用者),

継承ポン和牌中的万,索,筒,共108張,
易紅花為緑發,白花為白板,老千為紅中,名“三箭”,

(文中の「ポン」は日本語にない漢字.「石」へんに「並」)

訳すると,「(麻雀の発明者である陳魚門は)ポンホー牌の中のマンズ・ソーズ・ピンズ,108枚を継承し,それに加えて,「紅花」を「緑發」に変え,「白花」を「白板」とし,「賭博士」を「紅中」とし「3本の矢」と名づけた」となる.
つまり麻雀牌の前身「ポンホー牌」というものがあり,その中の紅花・白花・老千(「イカサマ士」とか「博打うち」という意味)がそれぞれ現在の白・發・中になったというのだが,ちょっと分かりづらい.なぜ「紅い花」が「緑」になるのか,なぜ「イカサマ士」が「中」になるのかは不明である.とはいえ三元牌の由来にはこれといった定説がないので,これもまた興味深い仮説であることは間違いない.
■麻雀は本来高尚で上品なものだ
最後は希望あふれる記事を.「マージャンの冊は高尚かつ上品だ」(日本語訳)では,これまでの説を唱えている「盛キ先生」(「キ」は「王」ヘンに「奇」)が,麻雀についての明るい展望を述べている.
それによれば,麻雀は囲碁・将棋とトランプのブリッジの要素が合わさった総合ゲームだという.先生は麻雀の性質を以下の3つに分類している.

    • 博打に利用されてしまった麻雀.
    • 家族全体の娯楽・冠婚葬祭の場での親交を深めるためのゲームとしての麻雀
    • 囲碁や将棋と同じく,健康的なスポーツとしての麻雀

更に先生は文を書き連ね,麻雀が人を惹きつけるのはそこに金銭が介在しているからではなく,麻雀には長い鮮明で深い民族性,厳かで重々しくて広範な文化性,尽きることがない情趣性,変化がめまぐるしい技巧性…などの数多くの魅力があり,つまりは中華民族の知恵と性格が表れたものだと主張する.このくだりはかなり美しい.
記事は「囲碁は2700年,将棋は120年もの間賭博だったが,改革運動を通じて高尚で上品な運動になった.麻雀も同様の運動によって改革することが可能だ」という力強い予言で結ばれている.確かにこの中では麻雀の歴史が最も浅い.



天津は先日のNHK番組「めざせ!マージャン名人・中国・女性雀士の挑戦」の主人公が住む街であり,彼女は確か「天津麻雀運動協会」という組織に所属していたはず.番組内ではその会長さんが「第1回麻雀世界選手権で日本に優勝された,麻雀の発祥地として絶対次は取り返す!」と鼻息が荒かったのを覚えている.
それも含めて,今回天津が非常に麻雀に対して熱心な都市であることが分かった.個人的には,中国で訪れたい都市No.1の称号を差し上げたい.
そして読者の皆様には,長文にお付き合いいただいたこと,お礼申し上げたい.あと,自分の語学力は非常に貧弱なので,訳に自信のない部分も多い.誤りなどあれば,コメント欄にてご指摘いただければ幸いである.
【参考】