麻雀業界日報(保管)

麻雀業界日報(2003~2005)の保管

マージャン・ジャーゴン(あるいは何て素敵な屋上屋)

「専門用語・術語」という意味から転じて「訳の分からない用語」を指すようになった単語「ジャーゴン(JARGON)」.ただでさえ専門用語で溢れかえっている麻雀に,余計なジャーゴンを日々追加しているのは日本だけかと思いきや,海外でも事情は変わらないようだ.「お前さ,それただのスラング(俗語)じゃなくない?」というツッコミを無視しながら,3つほど紹介していきたい.
ジャーゴンって何ジャゴン?
「JARGON」とは軍隊・法曹・ハッカーなどの狭い集団で使われる専門用語・隠語のこと.意味は「TERMINOLOGY」(用語)と似ているが,「より閉鎖的で,部外者には全く理解できない言葉」という否定的なニュアンスを含むらしい.
◆日本の麻雀ジャーゴン
発声「ポン・チー・ロン」を挙げるまでもなく,麻雀は専門用語の塊のようなゲームだが,それに加えてたくさんのジャーゴンが存在する.麻雀牌の名称に限っても,

    • チンポの輪切り … 一筒(イーピン)のこと. 一筒 断面図が似ている?から.
    • ガンダム … 南(ナン)のこと.南 じっと見つめていると,顔に見えなくもない.
    • 匕首 … 七萬(チーマン)のこと. 七萬 字面が似ているから.

などと盛りだくさん.
こんなおバカな物が存在するのは日本だけかと思いきや,海外にもジャーゴンはしっかりと存在した.
フィンランド
まずはフィンランド工科大学の学生組織による麻雀クラブ「Kejimajiangmi」(多分「ケジ・マジャン・ミ」と読むんだろう)のサイトに掲載されている麻雀ジャーゴン(http://www.tky.hut.fi/~kjmjm/english/miscellanea/jargon.html)から.英語に時折フィンランド語由来と思しき単語が混じり,つかめないところもあるが,概ね理解できる.

□「犬小屋」(Doghouse)
四萬(Character-4) 四萬のこと.「四」の形がそう見えるからだろう.
□「スモモの花」(Plum Blossom)
五筒(Dot-5)を指す 五筒.5弁の花びら.日本の赤五筒が,万博のシンボル「桜」にヒントを得て生まれたという説を想起させる.
□「豆腐」(Tofu)
白(White Dragon) 白.そのまま.
アトランティス(Atlantis)
リンシャン牌のこと.日本ではリンシャン牌を王牌(ワンパイ)の端に下ろして付けるが,ここでは上に乗っけるらしい.「いずれ沈む」という意味か.
□「きのこ雲」(Mushroom Cloud)・「太ったガチョウ」(Fat Duck)
それぞれ「西」(West Wind)西「東」(East Wind)東を上下逆さまに河に捨てた時の形容.日本の「東ミサイル」「中ビーム」に似ている.
□「ハクション」(Atchoo)
有効なメンツを崩すこと・ベタオリ.牌を捨てる時に言って,切り間違えたように装う言葉か.

ほかにも「To do a "Simon Says"」「To knife」などのジャーゴンが70あまり.
アメリカ・ユタ編
次に,アメリカの伝統的な麻雀ルールを解説しているMark's Mahjongg Pagesからのジャーゴン(http://codepoet.org/~markw/mahjongg/jargon.html).

□「毛沢東」(Chairman Mao)
一萬(1 Charactors)のこと 一萬.「第一位の人(キャラクター)」という事だろう.
□「プローヴォ寺院」(Provo Temple)
七索(7 Bamboo) 七索のこと.著者の住んでいるユタ州にある有名な寺院らしい.地雷針にも似た尖塔が一本だけ屹立している(下記画像参照)
□「ミッキーマウス」(Mickey Mouse)
八索(8 Bamboo) 八索のこと.イニシャル「M.M.」が似ているからだろう.日本だとMahjong Walkerのサイトのロゴがその発想に近い.
□「王牌の後見人」(Kong Box Guardian)
王牌("Kong Box",カンのための箱)のパイが落ちてこないように置く,小さなフィギュアの類を指す.「2つのルースな牌の間に置く」と書いてあるのだが,どのように置くかは分からない.
□「ポン・チー・チキン」(Pong Chow Chicken)
初心者が,何が必要かは分からないがとりあえず鳴きたい時にいう言葉.「クンパオチキン」(辛いフライドチキンのようなファーストフード)のもじり.

このページは,実際に仲間内で流行した言葉を主に載せているようで,何となく共感を覚える.上の「ポン・チー・チキン」も,シェリーさんという女性の口癖らしい.
◆ちょっと風雅に中国編
最後は本場中国から「麻将術語」(http://dengmi.nease.net/shbb/mjsy.htm).こちらはジャーゴン本来の「術語」という意味に近いと思うのだが,残念なことに単語が羅列してあるだけで,その意味や解説が一切ないので詳細が分からない.「清一色一条龍(チンイーソー・イッツー)」や「幺九七対(ヤオチュウチートイ)」などは役の形が推測できるのだが,

    • 智取生辰網
    • 東風吹戦鼓擂
    • 武大郎売焼餅

などに至ってはサッパリ.この用語についてご存じの方には,ぜひぜひご教授願いたいものである.
【追記】最後の「武大郎〜」については,浅見先生の解説をいただいた.右を参照のこと: http://www.asamiryo.jp/han47.html
◆麻雀ジャーゴンは善か悪か?
駆け足で見てきたが,麻雀のジャーゴンには否定されるべき性質と,肯定されるべき性質が共にある.
自分は麻雀に浸っているので気づかないが,麻雀を知らない人間にとっては,専門用語に加えて訳の分からない言葉まであるのは大変うっとおしいものだろう.麻雀の普及を妨げる要因の1つとさえ言えるかも知れない.
また熟達したフリー麻雀の打ち手の中には,三味線と取られかねないゲーム中の会話そのものを厭い,これが横行する店を「常連が馴れ合う店」として敬遠する人もいる.
しかし「4人によるコミュニケーション・社交」というのは,麻雀の発生に根ざす本質的な特徴の1つであると考えられる.また,とかくギスギスしがちな勝負事において,緊張や対立を回避する機構として,これらのジャーゴンが共有されている側面もあるだろう.
肯定的な意見がただの憶測にしか過ぎないのが残念だが,とにもかくにもジャーゴンは日々用いられ,また生み出されている.この件については再度調査して,何か分かることがあれば発表していきたい.
【参考】