麻雀業界日報(保管)

麻雀業界日報(2003~2005)の保管

ロン2・プロ対局、ツモアガリ放棄を認めない裁定

連盟公認のネット麻雀「ロン2(ロンロン)」のプロ対局「新鋭プロトーナメント」で興味深い裁定があった。一度終わった対局結果が、運営側の裁定によって覆ったという。プロ意識とは何か、公正とはどこにあるものなのか。ただの事件に終わらない、広範な議論を期待したい。
【経緯】
ロン2の管理人による日記「こごっちの管理人日記」11月18日付の説明によれば、事の経緯は以下の通り。

  • 問題の対局は「ロン2」の若手プロ限定「新鋭プロトーナメント」1回戦D卓。3回戦のトータルで争われ、上位2名が準々決勝に進出するもの。
  • 2回戦までのトータルポイントは次の通り(100点1ポイント+順位点)。
    1. 金沢真プロ  +233
    2. 中村毅プロ  +100
    3. 葛山英樹プロ ▲161
    4. 一井慎也プロ ▲172
  • 3回戦のオーラス3本場、持ち点は次の通り。
    1. 金沢真プロ  26,500点
    2. 中村毅プロ  37,000点
    3. 葛山英樹プロ 42,500点(荘家)
    4. 一井慎也プロ 11,000点
  • この時点で上位進出の可能性がほぼ0だった一井慎也プロが、リーチ後のハネマンのツモアガリを放棄(その局がどうなったかは不明)。
  • しかし運営側はこれを認めず、ツモアガリがあったものとして点数を集計する裁定を下した。結果として中村・葛山両プロが準々決勝進出。
  • 同時に一井プロは半年間のロン2での対局禁止処分を下された。

【参考】



【裁定理由】
運営側の裁定理由は以下のように説明されている。

その状況(引用者注・役満直撃でないと上位進出できない状況)で手を作り、リーチをかけ高目をツモったのならアガるのが同卓した3人の対戦者に対する公平・公正な行為でしょう。
そこでアガりを拒否する行為は、「意図的な着順操作」と非難され誤解を生む事にもなります。
今後、プロ意識の徹底に務め、(後略)


http://www.ron2.jp/diary.html より引用



【疑問点】
自分の疑問点は以下の5点。

  1. ある手をアガったかアガらなかったかは、故意・過失(切り間違い)といった原因には全く関係なく、プレイヤーの行為によって決められるのが当然である。アガらないという行為(パイを河に捨てること)を、他者によって覆すことはできるのか?
  2. 同様に、アガらないことによって場面は進み、その局は何らかの形で確定したはずである。確定したものを、事後に他者の判断によって覆すことはできるのか?
  3. もし上記が可能であれば、それは明文化されたルールによるものなのか? 仮に不正があったと発覚した場合、どこまでさかのぼって裁定が下されるのか。
  4. 「プロ意識」「公正」というのはどの観点から求められるものなのか。もし上位進出の可能性がなくとも、順位が変わるアガリであればOKなのか、これが最終戦ではなく、長期戦であれば認められるのか? あるいはギャラリーが全くいなかったとしても、同様の裁定になるのか?
  5. 恐らく明文化されてないルールに基づく処断として、半年の出場停止というのは妥当か。ルールに抜けがあった場合に、個人を裁く根拠はどこにあるのか?



【今後につなげるために】
この問題は、目のない時にどう打つか、という次元を越え、麻雀におけるフェアネス・オフィシャルの感覚、どこまでルールで決めるべきか、といった根本的な疑問を提示するものと自分は考える。
その意味で、昨年議論を巻き起こしたミュー関東インビテーションカップでの2着確保と受け取られるアガリ、あるいは最近話題になったオバカミーコのチョンボ裁定などと相通じるものがある。
もとよりはっきりとした解決は不可能だし、また独善的な取り決めは却って弊害を残すだけに終わるだろう。有意義な議論が起こることを期待して、ここに敢えて記すものである。
なお、ロン2はこの10月に正式オープンしたばかりのネット麻雀であり、まだユーザも流動的であると思われる。そのような中で、このような明確な経緯説明を行ったことは英断であり、スタッフの強い意気込みが感じられる。その点は最大限に評価したい。
【参考】

【追記】ヒロタシ氏(id:hirotashi:20041119#p1)がこの問題に反応していらっしゃる。いつもどおり論理的なので、ご覧になるのがよいと思われる。