麻雀業界日報(保管)

麻雀業界日報(2003~2005)の保管

須藤浩プロ、「1jann.com」で麻雀講座開始

須藤浩認定プロ(ミュー)が12月に開設したサイト「イチジャン・ドットコム」(http://www.1jann.com/)では、無料・有料で麻雀戦術講座を公開している。今回ご好意により講座テキスト「応用編」の提供を受けたので、その内容を紹介したい。
【麻雀プロによる講座サイト】
WEBには初級者向けを中心に沢山の麻雀講座サイトが存在するが、麻雀プロの手によるもの、となると限られてくる。木村和幸プロ(ミュー)によるザ・ベストクエスチョンや、2004年の夏ごろまで開かれていたIMSC(Internet Mahjong School and Clinic)の他には、プロが個人サイトで戦術を公開する程度、というのが現状である。
その理由は色々あるだろうが、技術的な要因*1を省いて考えると、

  1. そもそも、麻雀の戦術書、特に初級から中級向けのものは少ない。つまり需要がすくない。
  2. WEBでは、情報は基本的に無料で公開する必要があり、労力に対する効果が薄い。
  3. 集客力の高い所属団体のサイトがある場合、そちらに力を傾けた方が効果が高い。

といった点に集約される。
【無料+有料個人、独自ドメイン
そういった状況を踏まえて、須藤プロの「イチジャン・ドットコム」を見ると、そこには計算と熱意が明らかにはたらいている。つまり、

  1. 初級者がより強くなるための「最初の一歩」にあたる理論を提供する
  2. まずは無料の麻雀講座をメールで送り、内容を確認してもらった上で購入してもらう。購入後も、90日以内であれば返金も可能
  3. 独自ドメインを取得して、信頼と気概を示す

という3点である。ぶっちゃけて言えば「需要がなかったら自分で掘り起こし、出版できなければ自分で書き、流通に乗らなければ自分で宣伝する」ということで(須藤プロがこう言った訳ではない。念のため)、個人的には大好きな考え方である。
また、ミューという団体はメディアへの露出が少なく、ストイックな印象が強い。個人的にはマネージメントが不足していると思うが、戦術講座を独自ドメインで、というのは、認定プロ・ツアー選手の多くがレッスンプロの資格を持つ、ミューらしい方法である。
【「応用編」を読む】
前置きはこのへんにして、本題へ。イチジャンへアクセスし、専門家の声などを横目に見ながら「無料講座を申し込む」と、「最速のテンパイ」という題名のメールが計4回届く。その内容が気に入ったら、「応用編」のテキスト(概略版は2,000円、完全版は10,000円)を購入することになる。

応用編テキスト(A4版120ページ)
このテキストの中で述べられているのは「ロスの枚数」という理論。牌姿を、雀頭(アタマ)候補の数によって「雀頭0形」「雀頭1形」「雀頭2形」の3つに分類し、それぞれの場合で最もロスが少ない打牌を選ぶための考え方を詳述している。
面白いのは、打牌選択ごとの「ロスの枚数」の差は、「受け入れ枚数」の差と一致すること。今までぼんやりと理解したつもりでいたことが、鮮やかに解き明かされているのを見て驚いた。文章も丁寧で、飛躍している部分が一つもないのは素晴らしい。
【で、どうなの?役に立つの?】
しかし、提供を受けた身で言うのは心苦しいのだが、価格がかなり高い。とつげき東北氏の『科学する麻雀』が800円、通常の麻雀戦術書も1,000〜1,500円という相場に比べて、2,000〜10,000円という値段は手を出すのがためらわれる値段である。
ただこれは、カルチャーセンターなどで麻雀教室を受講する時とほぼ同じ値段である。内容は上に述べたとおり、より上の麻雀を目指すための最初の一歩にあたるので、学ぶ意欲があり、かつ教室などに通う時間のない人にとって役に立つテキストになると思われる。
また、麻雀は理論や戦術に習熟することと、アガリや勝率の上昇との関係がどちらかといえば薄い。そのために通常の戦術書は「何切る」などのケーススタディを増やしたり、トリビアルな発見を全体的な戦略のように取り上げたりすることが多い。
対して、このテキストは地味ではあるが徹底して1つの理論を追いかけている。ここに「麻雀戦術書はかくあるべし」という著者の気概を見て、先物買いするのも悪くない。という訳で、自分は年明けにでも代金を支払うつもりでいる、というのが答えになるだろうか。


【参考】

*1:HTMLの知識がないとか、牌画像を扱えないとか