麻雀業界日報(保管)

麻雀業界日報(2003~2005)の保管

小雀鬼の卓 littleMSN

8月初旬オープン,WEBで話題のコスプレ雀荘.「別冊近代麻雀」Vol.6にも取り上げられており*1,業界人としてぜひ視察せねば,と思いたち行ってみた.以下備忘録.

  • 東銀座といえば,九州ラーメンの名店が2つある.一風堂とやまちゃん,どちらにするか迷ったが,気軽さを求めてやまちゃんへ.ねぎぼっこし+替え玉,950円.

  • 昭和通を三原橋の交差点まで戻って晴海通りへ,歌舞伎座の前を過ぎ,七十七銀行の先を左折.左手にすぐ見つかる.地下1階.

  • 扉を開けるとテレビを見て感想を言い合う人たちの姿.小雀鬼(コスプレしているスタッフのお嬢さんたち)の手牌をビデオカメラで撮影して,リアルタイムで観戦できるようになっている.われポンを意識しているのか,ツモ牌を手牌の上に乗せてから切る.

  • チャイナドレスの女性からルール説明を受ける.ノーレート東風戦,アリアリ,赤が4枚(五筒×2,五索・五萬×1).食い替えアリ・ダブル役満採用(純正九連宝燈国士無双13面張,大四喜)というのがやや珍しい.

  • 1000円単位でカードを購入して,ゲーム代・食事代・ドリンク代などの支払いに用いる.3000円分(500×3,300×3,100×6)購入.ウーロン茶以外の飲み物が有料(300円)というのは,フリー慣れした人間にとって痛い出費.【追記】その他に入場料として500円.こちらは現金.

  • 話題となっているゲーム料金は,小雀鬼と打つ場合が1ゲーム800円,客同士のフリーが400円(いずれもオープン記念価格).風適法とのからみ*2が懸念されるが,チャージとか特別サービス料金を上乗せしていると思えば逸脱しているとまではいいがたく,むしろ前述のカードが換金できない事*3などを考えあわせると,きちんとその辺は心得ていると思われる.

  • 11時の閉店までにフリーで2回,小雀鬼卓で1回.「西は利きますか?*4」などと玄人丸出しの質問をしたおかげで,却って麻雀をあまり知らない人間と見なされ,以後の会話がスムーズになった.怪我の功名である.

  • 店のシステムのQ&A(http://littlemsn.net/qanda.net)や実際の対応を見るにつけ,コスプレ喫茶で培われたサービスのノウハウやネット麻雀ユーザへの配慮が注ぎこまれているのを感じる.例えば
    • 雀鬼の撮影OK,ただし必ず許可が必要で,場所も決められている.
    • ルール説明時に「東風荘のルールに近い」という言葉が入る.
    • トップを取ることで「雀魂(じゃんこん)」というポイントがたまり,上位者はランキングに乗る.
    • 雀鬼に営業力があり,客を見た対応ができる
    とか.客層も場の雰囲気を心得た風であり,違和感はあるものの不愉快ではない.

  • 自分はセット麻雀店のことはほとんど分からないが,銀座の東側は,社用での接待,あるいは会社員同士の飲みがはねた後の利用が多かった地域だろう.その用途のセット麻雀店が長期的に見て減少しているのは確かである.
    このお店がジリ貧を避け,新しい方向性を模索したお店であると考えれば,一つの好例として取り上げるに足る充実度だった.

  • 話は脱線するが,岩波新書『変わる商店街』(中沢孝夫,ISBN:4004307198)で一再ならず主張されていたのは,商店街はただの商店の集まりではなく有機的に機能すべきである,という論だった.
    推測の上に憶測を重ねると,銀座・丸の内を中心に存在した筈の,右肩上がりの景気・接待・料亭(あるいは終身雇用・親睦・居酒屋)→麻雀という紐帯はすでに消耗して機能していない.麻雀店が外にアイディアを求めたのか,それともコスプレ喫茶の関係者が麻雀店に注目したのか,どちらかは分からないが,問題意識のあり方,新しい可能性の創出法には,上の書籍と同じような視点があるのではなかろうか.

照れ隠しのためえらく固い話になったが,落ち着いてまとめよう.
店もマージャンも予想よりずっとしっかりしていて,心構えを解いて楽しむことができた.麻雀をゲームでしか知らない人,麻雀格闘倶楽部MJ2に親しんでいる人には好適ではなかろうか.惜しむらくは,スタッフと客とがともに2ちゃん語を話すことであり,これさえなければ,と思ったことである.
【参考】

*1:173ページ最下段

*2:第19条,遊戯料金の上限を定めている

*3:風適法第23条第1項2,3および第3項を参照のこと.ゲーセンのメダルが持ち帰りできないのと一緒の決まりである

*4:一般的な東風戦の店では,東の他に西(裏風)も場風(圏風牌)として扱うことが多い.西を場風にすることを「西がきく」と称する