麻雀業界日報(保管)

麻雀業界日報(2003~2005)の保管

大衆の賭け麻雀は娯楽活動−中国公安部副部長が発言

中国警察組織・公安部の副部長が今後の賭博の取締方針について発表した中で、大衆の賭け麻雀について発言した。それによると、大衆の小額の賭け麻雀は娯楽活動の範囲内であり、捜査や処分の対象にはならないという。複数の中国ニュースサイトからの情報。
◆発言内容とその位置づけ
問題の発言は13日に行われた、「全国集中打撃賭博」というキャンペーンの発表の中で行われた。公安部の副部長、白富景氏は、重点的に取り締まるべき8つの違法賭博活動について挙げたのち、以下のように述べたという。

白景富说,这次专项行动将区分赌博行为和群众娱乐活动。对群众带有少量彩头的打麻将、玩扑克等娱乐活动,不以赌博行为查处。对参与赌博活动情节轻微、赌资数额较少的,将以批评教育为主。

http://www.sznews.com/szsb/20050114/ca1379266.htmの最終段落より引用

拙訳は以下の通り(強調部分はizumickによる)。

白景富は、
「今回の特定項目の(取締)活動は賭博行為と大衆の娯楽活動を区分するものだ。大衆が少量の景品を賭けて麻雀を打ったり、ポーカーを遊んだりする活動に対して、賭博行動としての捜査や処分は行なわない。賭博活動に関与した事情が軽微だったり、賭け額が比較的小額だった場合には、注意や教導を主として(対応する)」
と述べた。



公安部は中国の警察組織のトップで、白景富はその副部長。昨年起きた福岡の一家4人殺害事件でも、日本側との対応に当たっていたようだ。その地位と発表の場所とを考え合わせる限り、かなり重大な影響力を持つものと考えてよいだろう。
◆反響
中国の新聞サイトはこの発言を重視して、その後の反響を伝えている。
「搜狐」1/17付の記事「麻雀やポーカー、景品があっても賭けには数えない?」(Excite翻訳)では、2人の識者の意見を掲載している。つまり、

  • 文中の「少量」「軽微」「小額」といった語の概念はあいまいであり、実際に取締を行う末端の派出所が明確に把握できない。
  • この発言は庶民の実際の活動に即した判断であり、評価に値する。賭博行為と娯楽活動の区分がはっきりすることで、ばつの悪い思いをせずに済み、また法律も明確に執行される。
    ただ、具体的なコントロール可能性は低いだろう。

といったところである。
重慶市ではこの発言を受けて、数年前に制定した「重慶市査禁賭博条例」を再度市民に呼びかけている。「搜狐」1/16付、「娯楽は賭けになってはいけない 市公安局は改めて『重慶市査禁賭博条例』を言う」(Excite翻訳)。この条例では、賭博の種類を「(一度の勝負の)賭け金」「(最終的な)勝ち負けの額」「勝ち負けの累計」に分類し、それぞれ「特大」「巨大」などの程度と、それに応じた刑罰を定めている。具体的には、

  1. 賭け金
    1. 500元より上は「特大」
    2. 100元より上、500元以下は「巨大」
    3. 20元より上、100元以下は「わりと大きい」
  2. 勝ち負けの額
    1. 5000元より上は「特大」
    2. 2000元より上、5000元以下は「巨大」
    3. 200元より上、2000元以下は「わりと大きい」
  3. 勝ち負けの累計
    1. 10000元より上は「特大」
    2. 5000元より上、10000元以下は「巨大」
    3. 2000元より上、5000元以下は「わりと大きい」
  4. 前3項はあてはまるもの全てを適用する

というもの。
また「北京青年報」1/17付の評論「賭博と娯楽の境界線」(Excite翻訳)では、両者の区別の難しさを「百万長者が数百元の賭け麻雀をするのは賭博か? 貧乏人が生活費の2割を宝くじに注ぎこむのは娯楽か?」と、どこの国でも変わらないたとえで述べた後、このように書いている(大意・izumick訳)。

商業活動の投資も「お金で勝ち負けを競う」と言えないこともないが、これは社会の財産・効用に創造的な価値をもたらす。しかし賭博は、結局勝ち負けの総和がゼロ(0)になるものであり、誰かが勝ったということは同じ分だけ誰かが負けたということだ。
賭け事を判断する重要な特徴は、この「総和が0のやり取り」であるかどうかだと思う。



◆憶測
自分は中国社会の研究者でもないし、知り合いがかの国にいる訳でもない。憶測にすぎないが、自分なりに以下の4点を背景として挙げてみる。

  • 悪質な賭博が増え、限られた警察のリソースを効率よく配分する必要に迫られたこと。
  • 麻雀やポーカーのような大衆賭博がおおっぴらに行なわれるようになり、それに反対する人々*1の活動も盛んになったこと。
  • 直轄市や省市県単位で独自の賭博禁止条例を定めるところも増えてきて、ある程度の統一見解が求められるようになったこと。
  • 資本主義経済が推進される中で、商業活動の中に含まれる賭博的要素を捉えなおす必要があること。

今後もできる限り反響を伝えていきたいと考えている。そのためにも、自分の誤り、不足している部分などをコメント欄でご指摘願えれば幸いである。


◆追記 05/01/23
賭博打撃キャンペーンの最初の成果が取り上げられている(英語)。22の省で600人ちかくが逮捕され、その中には公務員も含まれていたという。

上記にも書いたとおり、重点的な目標は8つあり、その中でも「オンライン賭博」「公務員が公費を使って海外で行う賭博」「違法くじ」は最大の攻撃目標だという。
まあそれはおいといて娯楽と賭博の境界線についての話。記事では、公安省の役人、Tong Jianming(童健明)氏の以下のような談話を伝えている(訳・強調はizumick)。

Tong said yesterday an important criteria is to see whether an activity is profit-oriented.

In the case of gambling, both gamblers and organizers definitely carried out their activities for financial gain, while relatives and friends just play for fun.

Tong said the judicial explanation will come out soon.


http://www.chinadaily.com.cn/english/doc/2005-01/20/content_410873.htmの最終3段落より引用

童氏は昨日、「その活動が利益を目標としているかどうかが重要な判断基準だ」と述べた。
賭博の場合は、参加者も主催者も明らかに金銭を得ることを目的として活動しているのに対し、親戚や友人と行う活動はただ楽しむためにやっている。
氏はまた、「法的な解釈がまもなく明らかになるだろう」と述べた。

詳細は不明だが、両者の線引きが、法的に行なわれることを示唆している。非常に興味深い。
◆更に追記 05/1/28
「中国情報局SEARCHINA」1/21付に記事があった。現在のところ、この動きを伝える日本語のニュースはこの1つのみ。

【参考】

*1:風紀の乱れや地域の不良化を懸念する声